ブログ

「雇用・労働・職場・労使関係」カテゴリーの記事一覧


<第2版を発刊しました。「弁護士・社労士・税理士が書いた Q&A 労働事件と労働保険・社会保険・税金」>【大橋】

  雇用・労働・職場・労使関係

 大変実務的な本なのですが、以前、2014年末にQ&A本を共著で刊行しました。

 この6月末、その第2版ができました。初版から5年半ぶりの改訂です。

 

 初版発刊でほっと一息。日本加除出版の担当者からは「売れ行きがいいです!」と言われて喜んでいたのですが。

 「第2版、どうですか?」との担当者さんのもちかけで、再度、執筆チームで集まって勉強会を始めたのが2017年のこと。そうしているうちに「働き方改革」や「ハラスメント防止」などの労働法制が大きく変わり、民法(債権法)も大改正。

 それらに対応するため、だいぶ拡充した第2版を発刊する運びとなりました。

 

 初版から変わらないこの本のウリは、弁護士が労働事件を解決するに際して、保険や税金のことを知っておかないと「あとでえらい目に遭う」ことがあるので、その手当をしていただけるということです。

 

 また、制度・運用の解説をするに際して、その法的根拠は何か、に徹底的にこだわっています。「この対応、おかしいな」と思ったときに、どうすればよいかがわかるのです。

・法律に根拠があるなら→法律解釈を裁判で争うことで変える余地がある。または、法改正運動をする必要がある。

・政令・省令・通達類に根拠があるなら→法律の趣旨に沿った解釈をして運用するよう、国会を通じて、あるいは行政への申入れによって、それらを変更する余地がある。または、その根拠が法律に反することを裁判で争うことで、それらを変更する余地がある。

 

 「基本的人権の擁護と社会正義の実現」。弁護士法1条に掲げる弁護士の使命です。

 行政の運用が基本的人権の擁護と社会正義の実現に適ったものであるか。これを監視し改善することこそ、弁護士の使命と考えているのです。その現れです。

 そういう意味で、類書を見ません。

 

 また、第2版で拡充したのは、各論部分です。

 労災・非正規雇用・高齢者・障がい者・外国人

 これらの項目を追加しました。また、末尾に索引も設けました。

 

 初版に比べて、価格は1.5倍くらい上がりました。ページも同様に増えました。ただ、紙質が薄いものになり、厚みはそれほど増えておらずスマートです。

 初版をお使いいただいていた方も、ぜひご購入ください。残念な思いはさせません。

 ページ数:500頁、発刊年月:2020年6月、定価:5,280円 (税込)

 日本加除出版のホームページからご覧ください。

https://www.kajo.co.jp/book/40574000002.html

 

「やりがい過労死」を考える~~4月25日過労死防止大阪センター シンポのご案内【大橋】

  お知らせ

過労死等防止対策推進法ができ、大阪にも過労死防止大阪センターが設立されて、5年目を迎えました。

 

第5回の今年の総会は、シンポジウムのテーマが「「やりがい過労死」を考える」とされました。

 

「教師は生徒のために、勤務医・看護師は患者のために、盛況の職員はその理念のために、さらには会社員もその会社のために・・・
それぞれの思いをもって長時間勤務を行うなかで「やりがい過労死」が生じています。
「やりがい過労死」を生み出す「自発的」な長時間勤務の下には、使用者に「やりがい搾取」とも言える勤務時間管理があるのでは・・・」

 

この「やりがい搾取」の実態をはっきりさせる企画。ぜひご参加ください。

 

私も、「ハラスメント防止対策の法制化をめぐる情勢」として、当日まで法制化の進行状況をまとめてご報告する予定です。

 

20190425(チラシ)過労死防止総会シンポ

管理職のセクハラ発言、厳重処分される時代がやってきた  (最高裁2015.2.26判決「海遊館事件」)  

  弁護士業務

SONY DSC

 

海遊館事件 最高裁判決

 

たまたま、セクハラ関係で続きますが、注目すべき最高裁判所の判決が出ましたので、お知らせします。

 

株式会社海遊館の男性社員2名が1年余にわたり女性の派遣社員に繰り返しセクハラ発言をし、被害女性社員はこれらも一つの理由として、退職するに至りました。

この被害女性社員が退職を決意した後に被害申告をしたため、同社が調査をした上、男性社員2名に出勤停止と減給の各懲戒処分を下しました。

これに対し、処分は重すぎるとして男性社員2名が同社に対して懲戒処分無効確認の訴訟を起こしていました。

この事件の最高裁判決が、2月26日にありました。

 

1審大阪地方裁判所の馬場俊宏裁判官は、セクハラ発言の証拠が女性派遣社員の証言しかない中で、発言を否定する男性社員2名がセクハラ発言をしたと認定しました。

そして、これらのセクハラ発言に対し、会社が就業規則の懲戒処分の規定に従って懲戒処分をしたのは「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる」として、処分は有効であると判断。男性社員2名の請求を棄却しました。

 

ところが、2審大阪高等裁判所の裁判体(裁判官3名、水上敏裁判長)は、1審判決で認定したセクハラ発言の一部を「セクハラ行為として就業規則所定の懲戒事由に当たるとまではいえない」と否定。

また、女性派遣社員が直接明確に男性社員2名の発言に対して抗議をしていないことや、同社内でセクハラ防止の啓発はあったもののどの程度の懲戒処分がなされるのかを明示していなかったことを挙げて、各懲戒処分は「重きに失し、社会通念上相当とは認められず、・・・権利の濫用として無効である」と判断したのです。

 

このように1審では懲戒処分有効、2審では懲戒処分無効と、全く逆の判決が出た中で、会社が上告し、これに対する判断が出たのです。

 

最高裁の判断は、「管理職としての立場を顧みず、職場において女性従業員らに対して本件各行為のような極めて不適切なセクハラ行為等を繰り返し、上告人(*会社)の企業秩序や職場規律に看過し難い有害な影響を与えた」ことから、各懲戒処分は社会通念上相当性を欠くとは言えず、有効としました。

会社が加害上司に課した重い各懲戒処分は、特に重すぎて不当というわけではない、つまり懲戒処分は有効、と判断したのです。

なかなか厳しい裁きっぷりで、明快です。

 

なお、最高裁判決の末尾に、「本件各行為」(極めて不適切なセクハラ行為等、と断言されているもの)が載っていますから、必要であればご覧ください。

 

昨今の裁判例を見ていますと、会社がセクハラ・パワハラの被害従業員から訴えを受けて、加害従業員を懲戒処分にし、それに対して加害従業員が争う、という裁判が目立ちます。

加害従業員はほとんど男性で上司、被害従業員が女性で部下、という構図です。

加害者とされた男性は職場での地位を失う、職場自体を失う、という重大局面に直面し、引くに引けず争い続けるわけです。(そんなに焦るなら、職場の女性に嫌がられるようなことをしなければよかったのですが。)

しかし会社としては、セクハラ・パワハラの訴えを放置して被害従業員を泣き寝入りさせたとあればコンプライアンスに関わる、ということでしょうか。処分を維持し、争うのです。

 

少し前までは、セクハラ被害を受けた従業員は、職場内相談窓口に行くかどうかを迷いました。信じてもらえず、二次被害に遭い、不利な噂にまでなってしまい、居づらくて辞めるしかなくなるのです。被害者が職場を去らざるを得ず、加害者はそのまま変わりがない。

そういう、被害者には救いのないような時代がありました。

 

もちろん今でも、一人ひっそり身を引いて、忘れられない被害に心身をボロボロにしている被害従業員が沢山おられるはずです。

しかし、このたびの最高裁判決で、司法は明快に一つの判断を下しました。

 

-被害従業員の嫌がるような性的言動を繰り返し、反省のない加害上司よ。

貴方には、もう居場所はない。-

セクハラ問題を回避するツボ。安易にするな、「容姿を誉めること」と「食事に誘うこと」(大橋) 

  講演・講師・発表

2015-02-25 17.24.33

 

2月25日、前からご縁のある中央労働委員会近畿地方事務所の主催する、「労使関係セミナー」にパネリストとして参加してきました。

今年は、場所が京都の同志社大学今出川校地。私も学生時代を京都で過ごしましたし、司法試験の論文ゼミは実は同志社答練に入れてもらっていたのですが、すっかり様変わりでした。

良心館という新しい建物の、広々としていること。地下鉄烏丸今出川駅北出口から直通で入れて、雨にも濡れない。素晴らしい勉学環境だと思いました。

 

それはさておき、「労使関係セミナー」の今回のテーマは、「職場のハラスメント問題」でした。ハラスメント問題は、近年の労働相談で上位3位に必ず入る、頻発する問題となっています。広い大教室でしたが、ざっと見て200名近い参加がありました。

 

第1部では、職場のハラスメントの概論を、吉川英一郎・中央労働委員会近畿区域地方調整委員長(同志社大学商学部教授)からパワーポイントで説明。私が若干のコメントをしました。

次に、京都労働局雇用均等室の高江洲洋子・地方機会均等指導官から「セクハラ指針の変更点」の説明。

最後に中労委近畿地方事務所調査官から、ハラスメント被害発生に関して労組から職場環境調整の団交を申し入れられたのに誠実な対応をしなかったとして北海道労委から不当労働行為救済命令が出され、中労委でも維持された「天使学園事件」の説明。

 

そして第2部は、労働雑誌・判例雑誌に掲載されたセクハラ・パワハラ判決例を材料に、行政・使用者・労働者がそれぞれの立場からコメントを述べるパネルディスカッションでした。

中労委近畿の区域地方調整委員(使用者委員)である古谷光弥さんも「この会社はひどいですね」と言うしかない、痛い会社の例が次々と出てきたわけですが、ハラスメント相談を年間100件は受けているという高江洲さんの以下の言葉は、特筆すべきだと思いましたので掲げます。

 

「セクハラの相談として受けるものの中で、最も男性と女性とで感覚が違うのが【誉める】と【食事に誘う】です。

男性が女性の服装や外見を誉めるとき、男性としては親近感を持たせるつもりで言っているのでしょうが、女性からすれば快く思わないことが多いです。ここで誤解をよく生じるのです。

また、食事に誘うというのは、男性からすると誘いに女性が応じると、一つのハードルを越えたと思うようなのですが、女性からすれば食事というのは毎日三度三度繰り返す日常の行為に過ぎません。女性が食事ならと思って軽く応じることが、男性からすれば違う意味にとらえられる。

本当に、この2つは誤解を生じやすい危険なポイントなのです。危険なので、しない方がよいと思います。」

 

セクハラ相談を受ける中で培われる格言のようで、私の頭にも染み入りました。

 

【誉める】と【食事に誘う】は、男性も注意、される女性も注意、です。

男女をひっくり返しても同じかもしれません。女性も注意、される男性も注意。

 

「部長、その恋愛はセクハラです!」(牟田和恵 著、集英社新書 2013年)【大橋】

  読書

部長!その恋愛はセクハラです

この年末年始休暇は、期間も長めでしたし、私も久しぶりにゆっくり過ごせました。

    年末の休みの前に、ある先輩から「これはぜひ読んでみて」と貸していただいたのがこの本です。
   セクハラ問題でいろいろな解説書は出ていますが、この本の他と違うところは、年齢の差、地位の差のある中で恋愛関係(と外観上見られる関係)に入った女性が、関係破綻に至って「あれはセクハラだった!」と思うに至るのはどういう心情か?ということが実に丁寧に解説されているところです。
    外観上恋愛関係ですから、相手の方は単なる「失恋」または「愛の終わり」としか捉えていません。それなのに「セクハラ」と訴えられ、職場内のハラスメント委員会から調査を受けたり、懲戒処分を受けたり、訴訟で損害賠償を請求される、というのは、まさに悪夢の到来です。
  結局、「それはハラスメントではなく恋愛だ」と認定される結果に終わるかもしれません。しかしその過程の中で、どれだけのエネルギーを費やさなければならないことでしょう。
    地位の差のある中で、若い女性が熟年男性の業務能力や地位に尊敬の念を覚えて親しく近づくということは、「警戒心がない」と非難されるべき筋合いではないでしょう。
   どちらかと言えば、その錯覚を利用して恋愛関係に持ち込む、地位に伴う力の濫用こそがセクハラ問題なのだと、著者は明快に解説します。
    この本で覚えておくべき「職場恋愛の三か条」を、ここでご紹介します。
    なぜ?と思われた方は本書をお読みください。
       <1>  仕事にかこつけて誘わない。
       <2>  しつこく誘わずにスマートに。
                 *ヒントは、「女性はイヤでもにっこりするもの」です。
       <3>   腹いせに仕返しをしない。

 

アクセス

もっと詳しく

大阪ふたば法律事務所

〒541-0041
大阪市中央区北浜2-1-3
北浜清友会館ビル9階

京阪電車「北浜駅」23番出口、大阪市営地下鉄堺筋線「北浜駅」2番出口より徒歩約1分

事務所ブログ

ご相談窓口

まずはお気軽にお問合せください

TEL:06-6205-9090

受付時間:平日午前9時30分~
午後5時30分

Copyright © 2014 大阪ふたば法律事務所. All Rights Reserved.