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「弁護士業務」カテゴリーの記事一覧


「在日韓国人の日本国内の銀行預金に関する相続準拠法」【金】

  弁護士業務

私が原告・被控訴人代理人として担当した事件の裁判例(大阪高判平成30年10月23日)が書籍に掲載されました。

 

「家庭の法と裁判 2020年6月号(vol.26)」(日本加除出版)
https://www.kajo.co.jp/magazine/index.php?action=magazineshow&code=31009000026&magazine_no=6

 

在日韓国人が日本の銀行に預貯金を遺したまま亡くなった場合に、どのように処理すべきかの裁判例です。

 

日本では、預貯金債権の相続について、過去の判例では、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然分割されるとされていましたが、最高裁平成28年12月19日決定により判例が変更されたことで、現在、預貯金債権は当然に分割されず遺産分割の対象となることとされています。

 

他方、韓国では、預貯金債権の相続について、韓国の最高裁に相当する大法院の判例で、過去の日本の判例と同様に、原則として、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然分割されると解釈されています。

 

そこで、在日韓国人が遺した相続預貯金について、死亡時の住居所である日本の判例が適用されるのか、本国(死亡時の国籍国)である韓国の判例が適用されるのかが争点となりました。

 

これについて、第一審の大阪地裁は、在日韓国人が遺した相続預貯金に関する準拠法が、法の適用に関する通則法36条の適用により、韓国法となるので、韓国大法院判例に従い、相続開始と同時に法定相続分に応じて当然分割されると判断しました。控訴審の大阪高裁も、この第一審の判断を維持しました。

 

最高裁平成28年12月19日決定後においても、在日外国人の相続預貯金の準拠法は、通則法36条により被相続人の本国法となることが示された点で、実務上、参考になるものと思われます。

 

#相続 #遺産分割 #渉外相続 #外国人 #韓国人

 

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「韓国における刑事電子訴訟制度の導入」【金】

  韓国の法律・判例

韓国大法院は、2018年7月31日に、来年初めから、刑事訴訟にも電子訴訟制度を導入することを明らかにしました。

 

韓国の電子訴訟制度は、2010年4月26日に始まった特許訴訟を皮切りに、2011年5月2日に民事訴訟、2013年1月21日に家事・行政訴訟、2013年9月16日に保全処分、2014年4月28日に破産・再生事件、2015年3月23日に民事執行・非訟事件の順で開始され、最後に残っていたのが刑事訴訟でした。刑事訴訟での電子訴訟制度導入によって、すべての訴訟で電子訴訟が実施されることになるようです。

 

従来の韓国の刑事訴訟手続における記録の閲覧・謄写は、紙の刑事記録の原本でのみ可能でしたが、一日に閲覧謄写をすることができる件数が予め決まっており、予約をしても、2~3週間先になってはじめて、閲覧謄写が可能となる状況だったようです。また、記録の謄写は、業者ではなく弁護人が行わなければならず、2016年10月1日に改正された刑事訴訟法により、記録の閲覧謄写時に個人情報について匿名処理をした上で謄写をしなければならず、閲覧謄写が遅れることが問題視されてきました。とくに、上告事件では、上告理由書の提出期間の相当部分を閲覧謄写期間に要する状態だったようです。

 

電子訴訟制度のもとでは、匿名処理がなされた電子記録の写しを閲覧でき、閲覧・謄写に要していた時間的、経済的な負担が軽減されることになるので、弁護士会が電子訴訟の導入を強く求めていました。

 

韓国大法院は、2018年7月16日から、上告事件について、記録をスキャンし、個人情報の保護措置を施したPDFファイルを、インターネットで送り、または、USBに保存して渡す方法を一部事件で実施していましたが、今回、さらに進んだ刑事電子訴訟が実現することになった格好です。

 

大韓弁協新聞 2018.08.06.

http://news.koreanbar.or.kr/news/articleView.html?idxno=18578

 

「韓国裁判所での初の外国語弁論による訴訟」【金】

  韓国の法律・判例

昨年12月4日の本ブログで、昨年11月24日に、「法院組織法」改正により、特許法院が審判権を有する事件等について、裁判所の許可により、当事者は、法廷で、韓国語以外の外国語による弁論が可能となったことについて書きました。

 

このたび、外国語による弁論が裁判所に許可された初の訴訟の期日が、韓国の特許法院で開かれることになりました。

 

オーストラリアの鉄鋼大手のブルースコープ・スチール(BSL)社が、本年6月20日に提訴した韓国特許庁長を被告とする特許審判院審決取消請求訴訟で、原告の弁論許可申請に対して被告も同意したことにより実現しました。

 

外国語による弁論が許可された事件では、訴訟当事者が法廷で通訳なく外国語で弁論することができ、外国語で作成された書面について韓国語訳文提出の義務も原則として免除されます。

 

ただし、韓国内の当事者は、韓国語で弁論し、韓国語の書面を提出できるほか、裁判官は、韓国語で訴訟指揮を行い、判決書も韓国語で作成されますが、弁論中の同時通訳と判決書には英訳文が提供されることになります。

 

大韓弁協新聞 2018.07.30.

http://news.koreanbar.or.kr/news/articleView.html?idxno=18554

「韓国国際私法の改正案-国際裁判管轄に関する規定の整備」【金】

  韓国の法律・判例

1.韓国法務部が、2018年1月29日、「国際私法」全面改正の立法予告を行いました。改正の内容は、個別具体的な国際裁判管轄の規定を導入するものです。

http://www.lawmaking.go.kr/lmSts/govLmPln/1000000152422/2000000219907

 

「法律新聞」2018年1月25日付記事

https://www.lawtimes.co.kr/Legal-News/Legal-News-View?serial=139617&page=3

 

2.「国際私法」は、日本の「法の適用に関する通則法」に相当する法律で、事件の当事者の国籍・住所、財産の所在場所、契約の締結の場所などの法律関係を構成する要素が、2つ以上の国などに関係している事件において、どの国の法律を適用するか等について規定しています。

 

3.従来の韓国の「国際私法」は、第2条で「大韓民国と実質的関連性」がある場合に国際裁判管轄権を認めるという大原則を抽象的に規定しているだけで、具体的な判断基準を定めていませんでした。

今回の改正案は、韓国大法院が判例で示した「実質的関連性」を具体化する基準(当事者間の衡平、裁判の適正、迅速及び経済)を法律に反映するとともに、一般管轄(普通裁判籍)、特別管轄(特別裁判籍)などに加え、民事事件・保全事件・家事事件など事件、法律関係の各類型に応じた個別具体的な裁判管轄を「国際私法」という一つの法にまとめて定めるものです。そのため、法律の構成も大きく変える全面改正の内容となっています。

http://www.lawmaking.go.kr/file/download/7199698/IAG484GXX3WFZWK5PB9E

[法律案のファイル(hwpファイル) のダウンロード ]

 

4.日本でも、一般民事事件の国際裁判管轄に関する2011年の民事訴訟法・民事保全法の改正に続き、人訴事件・家事事件に関する国際裁判管轄に関する人事訴訟法・家事事件手続法の改正案について、現在、国会で審議がなされています。

今回の韓国国際私法の改正案では、日本と異なり、韓国の民事訴訟法、家事訴訟法等の改正ではなく、国際私法の中に、国際裁判管轄に関する個別具体的な規定を置くことにしています。

 

5.韓国の立法手続は、政府立法については、所管の政府機関(主管機関)が立法予告を行い、主管機関の長、法制処、次官会議・国務会議の各審査、審議を経て、大統領の裁可を得た法律案が国会に提出されるという流れとなります。韓国の法務部では、2018年5月31日までに、法律案を国会に提出するスケジュールで作業を進めているようです。

今回の国際私法の改正案が国会を通過するかどうかは、まだ分かりませんが、実務に少なからず影響を与えることから、今後の韓国の国際私法改正の動向が注目されます。

「韓国民法の改正-実子(親生子)の推定規定について」【金】

  韓国の法律・判例

1.本年2月1日に、夫の実子(親生子)の推定規定を改正した韓国の改正民法が施行されます。

 

その主な内容は、婚姻関係終了日から300日以内に出生した子について、婚姻中の子として出生申告がなされない限り、家庭法院(家庭裁判所)の認知の許可を得た場合には、実子(親生子)の推定が及ばなくなり、子の父が、自身の子として出生申告をすることができるというものです(民法第844条第3項、第855条の2第1項、同条第3項)。

 

2.韓国でも、嫡出推定を定めた日本の民法と同様に、婚姻成立日から200日後または婚姻関係終了日から300日以内に出生した子(民法旧第844条第2項)は、妻が婚姻中に懐胎した子として夫の子と推定され(同条第1項)、母親または前夫が家庭法院(家庭裁判所)に親生否認の訴えを提起し(同法旧第846条)前夫と子の実子推定を破らない限り、子の実夫は、自身の子を認知することができませんでした。

 

この民法844条2項が違憲であることの確認を求める憲法訴願審判請求がなされ、2015年4月30日、憲法裁判所が、民法第844条第2項のうち「婚姻関係終了の日から300日内に出生した子」の部分を違憲(憲法不合致)とする決定が下りました(2015年4月30日決定・2013憲マ623)。

 

違憲決定の理由は、子の実父が明白な場合にでも無条件に前夫の実子として推定することは、真実の血縁にしたがって家族関係をなそうとする者の人格権と幸福追求権を侵害するとともに、個人の尊厳と両性の平等に基づく婚姻と家族生活に関する基本権も侵害する、というものでした。

 

違憲決定を受けて、母親または前夫による親生否認の訴えを経なくとも、子の実父が、自ら認知を可能とする民法改正がなされたというわけです。(なお、従来と同様に、母親または前夫による親生否認の許可請求の制度も存在しています。)

 

3.このような韓国の民法改正にともなって、日本の家庭裁判所でも、実父による認知の許可請求ができるのかが注目されます。

認知の実質的成立要件の準拠法は、通則法29条1項、2項により、子の出生当時の認知者の本国法、認知当時の認知者の本国法、認知当時の子の本国法のいずれかの選択的適用、認知の方式の準拠法は、通則法34条により、認知の成立について適用すべき法(実質的成立要件の準拠法)または行為地法の選択的適用とされています。したがって、実質的成立要件の問題にせよ、方式の問題にせよ、実父が韓国人である場合には、上記の改正韓国民法の適用があるように考えられるからです。

 

※ 断りのない限り、上記では「民法」は韓国民法を意味しています。

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